― 春のはじまりに、静かに整える ―
三月三日。
桃の節句。
子どもの頃は、
ただ雛人形を飾る日、という認識でした。
(もっと正確に言えば、
男兄弟だった僕には、どこか他人事の行事でした。)
大人になると、
少し違って見えてきます。
春は、まだ途中。
寒さも残り、花粉も飛び、
身体も心も、どこか落ち着かない。
それでも、桃の花は咲きます。
桃の節句は、もともと
「上巳(じょうし)の節句」と呼ばれていて、
紙で作った人形に自分の穢れを移し、
川へ流す風習があったそうです。
いまのように“飾る日”になる前は、
“流す日”だった、ということになります。
なるほど、と思いました。
悪いものをやっつけるのではなく、
いったん外へ出す。
抱え込まず、
流してしまう。
ヨガでも、
前屈でも、ねじりでも、ただ座っている時間でも、
吐く息とともに
余計な力がほどけていく瞬間があります。
整える、というより、
戻っていく感覚。
桃の節句は、
そんな“静かな整え直し”の日と
思ってみてもいいのかもしれません。
強くならなくていい。
特別なことをしなくてもいい。
ただ、
いまここにある呼吸を感じる。
大げさなことはせず、
季節が変わる合図として、
少しだけ身軽になる。
春が本格的に来る前に、
内側をやわらかくしておく。
それくらいで、
ちょうどいいのだと思います。


