― 調子の波も、呼吸の一部として受け入れる ―
海へ行くと、毎日同じ波はありません。
静かな日もあれば、力強く岸へ押し寄せる日もあります。風向きや潮の満ち引きによって、その表情は驚くほど変わります。
そんな海を見て、「今日は波が悪い海だ」と決めつけることはあまりありません。ただ、その日の海として受け止め、その日に合った過ごし方を選びます。
けれど、自分自身のことになると少し違います。
昨日より身体が重いだけで焦ったり、気持ちが乗らないだけで「今日はダメだ」と思ってしまったり。まるで毎日、同じ自分でいなければいけないような気持ちになってしまうことがあります。
でも、本当にそうなのでしょうか。
調子が良い日も、そうでない日も
人の身体は、とても繊細です。
睡眠、気温、湿度、食事、人との会話、仕事の疲れ。ほんの少しの違いでも、身体の軽さや呼吸の深さは変わっていきます。
心も同じです。
理由がはっきりしないまま元気な日もあれば、何となく気持ちが沈む日もあります。それは決して「弱さ」ではなく、生きているからこその自然な変化です。
ヨガを長く続けていると、そのことが少しずつ分かるようになります。
今日は前屈が浅い日。
今日は片足立ちがぐらつく日。
今日は呼吸だけが心地よい日。
どれも、その日の自分なのです。
満ちては引いていく、心の波
海は、満ち潮と引き潮を繰り返しています。
どちらかだけが続くことはありません。
心にも、同じようなリズムがあります。
やる気が満ちてくる時期もあれば、静かに休みたくなる時期もあります。前向きになれる日もあれば、何もしたくない日もあります。
もし今が「引いている時期」だとしても、それは終わりではありません。
潮がまた満ちてくるように、人のエネルギーも少しずつ戻ってきます。
自然は、急ぐことを知りません。
だからこそ、長く続いていくのでしょう。
コントロールしようとしない心地よさ
私たちは、どうしても自分を管理しようとします。
もっと頑張ろう。
もっと元気でいよう。
もっと前向きでいよう。
もちろん、その気持ちは悪いものではありません。
でも、すべてを思い通りにしようとすると、心は少しずつ疲れていきます。
ヨガで大切にしているのは、「コントロール」よりも「観察」です。
今日は呼吸が浅いな。
今日は肩に力が入っているな。
今日は少し疲れているみたいだな。
評価するのではなく、ただ気づく。
その優しいまなざしが、自分自身を少しずつ整えてくれます。
波に逆らわず、呼吸に戻る
サーフィンでは、大きな波に無理に逆らうほど疲れてしまいます。
波のリズムを感じ、その流れを読んで動いたほうが、ずっと自然に進むことができます。
人生も、少し似ているのかもしれません。
いつも全力で前へ進もうとしなくてもいい。
立ち止まる日があってもいい。
静かな日があるからこそ、また動き出せる日が訪れます。
そんな自分のリズムを信じられるようになると、毎日は少しだけ穏やかになります。
今日の呼吸は、今日だけのもの
吸う息も、吐く息も、一つとして同じものはありません。
今日の呼吸は今日だけの呼吸であり、今日の身体は今日だけの身体です。
だからこそ、「昨日よりできたか」「前より上手くできたか」ではなく、「今日の自分はどう感じているだろう」と問いかけてみてください。
波が寄せては返すように、私たちの身体も心も、揺れながら生きています。
その揺らぎを消そうとするのではなく、そのリズムにそっと呼吸を重ねてみる。
きっとそこには、何かを頑張って手に入れる安心ではなく、もともと自分の中にあった静けさが待っています。
Mat & Breath
呼吸とともに、自分へ戻る。

